幸せは手ぶら

昨日、雨の赤レンガ倉庫を歩いていたら 

傘もささず 猫の入ったキャリーケースを両手で持ち
高速道路100 km で逆走してきそうな不幸顔の女性が

歳の頃なら25,6 マンハッタン大停電の中でも その顔は明らか

元は綺麗な顔なのに、どうしたのだろう 幸せの素人なのか?

運を必要としない人生のプロなのか? 定かではない 

きっと相手を選ばない占い師でも、商売道具を畳んで逃げてしまう手相なのだろう

幸せは、1種類の手土産だけを持って 遊びに寄る

人はそれを すぐに飽きてしまい もっと欲しいと笑顔を用意して待っていても
幸せは手ぶらで来る時がある

不幸ってやつは、どでかい土産を背負って 近づいてきて

人はそれを数えるだけで両指が足りず、時間を費やし
いらないと舌打ちしてお返ししても 律儀に差し出す

俺は、不幸の素人でいたい

俺たちは港をぐるっと一周して、ディゴがいるので ペット OK のエリアのピクニックコートでランチ

よりによって、あの女性も入ってきて 俺たちの向かいのテーブルに座り
ハンバーガーを食べもせず 思いにふけっていた

その何十分か後に、男が一人  

(やはりそうか)

無言のうち、何分かが過ぎただろうか 

猫を取り出し、自分がつけていたペンダントを 猫の首にぐるぐると回しつけ
男に渡した

彼女は帰り 手ぶらか

他人の別れる瞬間を見たのは初めてだ 

俺は、うちの奥さんの話は上の空のそのまた宇宙の上で
2人の行方に耳をそばだてていた が 2人は無言

女性は、雨が降りしきるガラスの向こうを見つめ 男は猫をキャリーケースに入れ

1人で帰って行った

あの二人も、いつか手土産を持った幸せが遊びに来た時 

受け取れる日が訪れるといいね 

俺みたいに 

家の場合、ハズキルーペで見ても 見えないほどの小さな手土産だったが

しっかり土産代は取られた

IMG_1349 (編集済み)
赤煉瓦倉庫 ピクニックコート

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