祭りのあと

毎朝5時半に、ディゴと散歩

途中の公園で知り合ったアンティークなあの人がいる

あの人はあまりにも孤独すぎて、誰かに話しかけたくて

昔、唯一相手にしてくれた長距離電話手につながる受話器を
今だ捨てずに持っていた

夜のてっぺんを超えても眠ることはなく 夜を過ぎたことを知り 明るさに気付いた頃

真っ暗で見つけにくかったドアノブにやっとたどり着き 朝の散歩に出かける

ひとりぼっちの夜はいただけないと

人の流れで曜日を覚え 花の香りで季節を感じ 空の高さで傘を持ち 女の化粧で時を知る

そんなあの人は、俺と会う時間を把握しているらしく 

いつも同じ場所で俺の来る方向を眺めている

赤ではなくなったCOKEのベンチに座り、古ぼけた期限切れの小切手の裏にメモを残し

誰に渡すわけでもなくポケットにしまう

そして、「おはよう」と声を掛け合い

Y 染色体として生きて行くには疲れ果ててしまったみたいで

俺が足を止めた時だけ話しかけてくる

少しずつ色々なことを聞き あの人を知った

派手な人だらけの職業だったらしく、最後は嫌になり 今は一人でいいと言い切る

性格はあの人に懐いている野良猫の色と同じ 白黒はっきりしている

さすがに、「なぜ孤独でいいのですか?」とも聞けず1年が過ぎた

俺はああはなりたくないと思った時もあった

祭りの後でも人と一緒にいたいと思った

今ではあの人に「ひとりじゃないよ」と教えてあげたい

おじさん誰かが気にかけているよ

あの人にも自分が好きだった頃があったはず

もう一度会いに行けばいいのに

person sitting on bench under tree

 

 

 

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