The phone connect to the future

2020 11月1日 午前0時過ぎ

見覚えのない着信音が…

「非通知」 「もしもし 誰?」

「俺」

「俺って?」

「誰よりも君を知っている奴」 

「はぁ?」 聞こえづらい 今時 長距離か?

「どこからかけてる?」

「38年前から」

その声は、確かに俺の声だった

過去の自分から 現代の自分に電話がかかってきたことに気づくのに、そう時間はかからなかった

疑うこともなく、恐怖を感じることもなく、会話にのめり込み

今の俺は、電話の向こうの俺に伝えたいことがありすぎて 空回り

あれからの喜びや 悲しみを少しでも話そうとすると、声が詰まり

彼の一方的な声を聞くだけ

1983年11月1日 レコードデビューした日

きっと、あの部屋からかけてきたに違いない

5.5畳のワンルーム 金なし 服なし 穴あきコンバース1足 ギター1本 カセットデッキ

そんなことさえ苦でもない バラ色

あの前日の夜、夢のスタートラインに立てる嬉しさで、興奮しすぎて眠れず

おちゃらけて 一人芝居をした覚えがある

受話器を取り、何年か後の俺に電話をし

「もしもし 未来の俺さん?元気してる? BIGになれたか?幸せか?夢はどうだった?結婚は?健康かい?」

と あの電話が繋がるのに38年もかかるなんて

数え切れないほど ベルが鳴っていたのだろう

星の輝きが、地球に届くのに時間がかかるのと似ている

あの頃の 輝きを今見ているようだ

夢か 現実か 

どちらを信じるかはあなた次第

電話の会話が成立していたら、人生はどう変わっていたのか

38年前の俺に、少しだけ伝えられることが許されるのならば

こう伝えたい 

得た物は大きく 後世に残せるものも手に入れたが

そのために犠牲にしてきたものは、それよりもはるかに多く

今では 犠牲にしてきたすべてのものを愛おしく 切なく 抱き寄せているだけだと…

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