老人と椅子

いつもの根岸公園は、梅や桃の花が咲き
それを追うかのような 何倍かの数の桜の蕾が、春の先っちょを見つめている

そんな公園を見下ろす一等席に、ポツンと 白髪でキャップをかぶった老人と犬が
自前のバネの壊れた椅子にもたれ 向こうとこちらを眺めながら のんびり….

駐車場でポルシェから降りてきた あのおしゃれな老人だ

ディゴのフリスビーが、老人の足元まで飛んでいってしまい
拾いに行くと話しかけられた

「綺麗な犬ですね」

「はい ありがとうございます」

ジャーマンシェパードを連れていて、ディゴ はビビって近寄らない

そこから話が盛り上がり、大手外資系の仕事で シカゴに住んでいたらしい

四年前に奥様を亡くし 山の手の家に戻ってきたとのこと

根岸に娘さんと孫がいて、日本にいる時は よくみんなでここに来てたらしい

この人の生き様や アメリカとメキシコの国境の話は 興味深いものがあった

ただ、背中がとても寂しそうで 少し自分に置き換えたりもしてみた

もし 妻が先に逝ってしまったら、生きて行けるのだろうか

死んだふりをして 同じ棺に入っちゃうんじゃないかとか

墓の前で 米を炊いて住んでしまうかもしれない

ハチ公のように、毎日帰りをお外で待っていて 風邪を引いて死んじゃうんじゃないかとか

考えるだけでも変になりそう

と妻に伝えたら

「元々 変じゃん」 サクッと言われた

あんな渋くて 穏やかな老人にはなりそうもない

引退したとはいえ、まだまだ空を見つめる目はギラギラしていた

俺も、人生の3/4は過ぎたとはいえ もっともっと楽しませてもらわないと 

頑張って生きなきゃ

この公園の近くに、マッカーサーという地名がある

あのアメリカの マッカーサー元帥 の名を付けたらしい

そこに戦後 マッカーサーが住んでいたみたいだ

マッカーサーが引退する時 残した有名な言葉がある

「老人は死なず ただ去るのみ」

今日出会った老人はそのもの 素敵でした

                           ….. 隣に奥様が座っていたような….

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男の背中

 

 

 

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