TAXI

忘れもしない、食道癌が発見される数日前 8月14日

AM 2時過ぎの出来事でした

都内でのレコーディング スタジオ前でタクシーに手を上げ横浜まで

個人タクシーが喜ぶ高速経由の長距離

疲れ切った体をシートに沈め 大雑把に帰宅への道のりを

そのまま深い眠りについてしまった

「家に着きました お客様」

「はい?え?  そんなばなな」

いつも 家の近くの国道沿いの図書館前で降り 歩いたほうが早く 

タクシーで家まで行くことはない

「運転手さん なんで家がわかったんですか?」

「 図書館前の信号で止まった時、 お年を召した女性の方が近寄ってきて誘導してくれました」

「お母さまじゃないんですか?」 

「こんな遅く 優しい方ですね お客様を寝かしておいて」といわれたので

俺は、頭がぼーっとしたまま玄関前へ

はあ⁈ おかあさん⁈

その年の9月は、母の3回忌

そして その日はお盆だった 

p・s どうやら 故人タクシーに乗ってしまったようだ

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