どうやら俺には、マブダチができたらしい
奴とは徐々に知り合う時間などなく 突然やって来る
頼んでもいないのに 幾度となく人間の瞼を 永遠に閉じようとするのが仕事
いくら仕事とは言え 協力しろと言われても 無理な話
勘弁してくれ
あ、 紹介しておこう
奴は死神と呼ばれてる
すき好んで出くわした訳じゃない
神様は あの世に行かない限り振り向いてもくれないが
この世で死神とは いつでも目が合う
ここでも あそこでも そっちでも
タフな人間だけが 奴の存在を知る
知る事無く 人生の幕を引ければ 気楽な稼業だと
亡き母が苦しんでるときに語っていたことを思い出す
奴は俺を嫌いだした
何度足を運んでも 手土産一つなく 商売あがったりだと
愛想尽かして帰っていく
今日まで生きていられるのは 奇跡に近い
お医者様は 強い人 鉄人 だと誉め言葉の裏に 恐怖の言葉を付け加えて
渡してくる
酒 タバコ 生活習慣 人間関係 ストレス 過去の罪
今や 病院は懺悔室だが 何を懺悔しようが
元通りにはならない
ならば 残された時間をもっともっと楽しもう
もう一度この手で
ワイングラスをつかむよりは簡単だ
人間は 高いところに上りたがる
上から見ることが大好きな生き物
だから天国に行きたがる
地獄よりはましだ という奴もいるが
俺は、パラグライダーをしょっていないと 高所恐怖症
高いところが怖いんじゃなく 落ちた時、痛いのが嫌なだけだ
上でも下でもなく やはり この世に居座ることが正解かも
貴女の目の前にも ほらね….